商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

先達に学ぶ:Bartunek (2007)_1

皆様こんばんは。珍しく連続で更新している執筆者です。

さてご覧のとおりブログ全体のタイトルを「アカデミックな読書メモ」から「商売としての経営学研究者」へと変更しました。

最初は読書メモ(現在270冊ほど)を載せようと思っていたのですが、なんとなく方針転換して、経営学研究について考える場にしたいとシフトしました。

 

さて、本日は前回に引き続きAMJ(このブログを読んでいただいている経営「学」がお好きな方には共通理解のはず)からです。

Bartunek, J. M. (2007). Academic-practitioner collaboration need not require joint or relevant research: Toward a relational scholarship of integration. Academy of Management Journal, 50(6), 1323-1333.

読んで字のごとく、Academic-practitioner collaborationについてのお話です。執筆者はこのテーマにとても興味を持っています。

How management research might have an impact on management practice has been of concern since at least the beginning of AMJ in 1958

まず、経営の研究(経営学)がマネジメントの実践(現場)にどのようにインパクトを与えることができるのか、というテーマについては1958年以来ずっと考えられているそうです。

the Academy's employing Ben Haimowitz as our public relations director, which has been accompanied by increasing attention over the years to making our work known to others through articles in newspapers and other media

学会では広報の人を雇って、新聞や他のメディアで私たち経営学者の研究を発信しようとしているそうです。確かに経営学の知見は需要がすごくありそうですが、依然としてアクセスするのが難しい状況だと思います。

Action research, a method in which, in theory at least, practitioners and academics collaborate to address important organizational issues and make scholarly contributions as a result

現場人と研究者が協働して、重要な組織的課題の解決に取り組み、論文を書く、という「アクションリサーチ」や、practitioner-oriented doctoral programs(いわゆる社会人博士課程)があるそうです。(in theory at leastという表現からは、少し批判的な香りがします笑)

さてrigorous / relevant、すなわち学問として厳密rigorousであることと、現場と関連性の高いrelevantテーマを扱うことを両立することが、重要だと経営学の分野ではしばしば言われます。(うまい表現です)

 

しかし、それを実践することは簡単ではないとBartunek先生は指摘します。(やっぱり)

Do they expect management practitioners to read (this section of) the articles?

How and how much are they trying to convince potential users of their research about its value and applicability?

Is their communication style likely to be persuasive?

 だいたいの経営学の論文には最後のほうに(ちょろっと)実務への貢献practical implicationというセクションがあります。でもそれってほんとに現場人が読んでると思ってるの?という1つ目のクエスチョン。

研究のユーザーとなる人にどんだけその価値と適用可能性を説明しようとしてるの?というのが2つ目のクエスチョン。ユーザーという部分に執筆者は下線を引きましたが、まさにBartunek先生のおっしゃる通りです。

だいたいの論文は学術コミュニティのメンバーが読むことを想定していると思いますし、それでいいのだと思います。しかし、経営学ですよ。ビジネスの研究のユーザーとしては当然現場人も想定されるべきじゃないのか。もちろんそれを論文で実現する必要があるのかは謎です。論文は論文ですから。なので『世界の経営学者は~』が売れたのだと思います。一橋の楠木先生の本も売れる(たぶん)のだと思います。研究のアカデミックな知見を踏まえた、ビジネス書がもっと出てくると良いかと思います。

それを書くのはおそらく研究者だけでは難しいでしょうから、現場の経験豊富な方との共著、あるいは『嫌われる勇気』のような対話形式も面白そうです。例えば日々何かしらの経営的課題に直面するビジネスパーソンの方がお悩み相談をするみたいな。(出版社の方、ご連絡お待ちしております…笑)

 

すごく脱線しました。あと3分しかありません。笑

あ、3つ目のクエスチョン忘れてました。経営学の知見を伝える方法は、ほんまにそれでええんか?ということですね。このブログがそのような機能を果たせているといいなーと思いますが、そのためには色々と改善点がありそうです。

ということで、明日は月曜日です。

次回に続く

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com