商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

記事を読みながら考える:楠木20200421

お久しぶりです。先日「執筆者について」を改訂したので、もしお暇があればお読みくださいませ。最近の研究・実践プロジェクトについても加筆しております。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

さて今回はいつもと趣向を変えて、Web記事にコメントを挟みつつ、ご紹介しようと思います。

といっても、300日前(笑)の記事でご紹介した楠木先生の日経ビジネスオンラインの記事ですが。

↓こちらは前のブログです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

今のご時世、本よりもWeb上の記事の方が日常的に読まれている気がしますし、執筆者自身もWeb記事を読んでいる時間の方が長いかもしれません。(もちろん論文を読んでる時間を除いてですが笑)

発信の媒体が変わりつつあります。そのメディアにあわせた発信の工夫が必要なのかもしれません。YouTuber含めインフルエンサーの方はうまく時流にフィットしているのでしょう。

今どきのオンライン会議でも、今までとは違ったコミュニケーションの仕方が必要かと思います。営業とかもオンラインでいい感じに進められるようになると、またおもろい世界になりそうです。

 

さて前置きが長くなりました。

以下本題です。

 

business.nikkei.com

だいぶキャッチーなタイトルですが、キャッチされて読むと内容があってよいと思います。特に経営「学」がお好きな方には刺さるかなと。(あくまで個人の感想です笑)

 

楠木:経営学者は経営に関する考えを提供しようとする人たちですが、2つのタイプに分かれます。経営をサイエンスとして研究する人と、そうではない人です。

 

「考える」ことを仕事にしている」という表現もありました。

ビジネスマン(ウーマンも含んだ使用です)の方は、日々走っておられるので、その走っている人を眺めながら考えている人、が経営学者だというお話だった記憶があります。

楠木:サイエンスというのは「XであるほどYになる」というような普遍的法則の定立を目指します

そして、 

楠木:もちろん自身の理論を誰かが実務に役立ててくれる分にはいいのですが、実務家が直接の仕事のオーディエンスになっていないということです。アインシュタインのE=mc2は後にいろいろと役立ったわけですけれども、それをどうやって役立てるかには一義的な関心がない。科学的な知見を学術的なコミュニティーに学術論文の形でプールしておき、ここに法則がたまっているので皆さんよしなにどうぞお使いくださいというスタンスですね。実務家に対する直販をはしない、直接の顧客は学会という卸です

 後半の「皆さんよしなにどうぞお使いくださいというスタンス」や「実務家に対する直販をはしない、直接の顧客は学会という卸です」という表現は非常にイメージやすいです。

自分が価値を提供している(したい)お客さんは誰なのか、という切り口で2つのタイプに分かれるということですね。

 一方、僕のようなタイプは経営学を科学としてやっているわけではありません。法則の定立を目的としていません。「こう考えたらどうですか」「本質はここにあるのではないでしょうか」ということで、理論というよりも論理、ロジックを提供している。売り方にしても卸を通じた間接販売ではありません。本や講演を通じて、自分の考えを直接エンドユーザーである実務家に届けようとします。場合によっては企業をお手伝いすることもあります。高名な経営学者でいうと、ヘンリー・ミンツバーグ先生や、僕が仕事をしている競争戦略の分野で言うとマイケル・ポーター先生はこのタイプです。学術雑誌の論文よりも、実務家向けの本や論文をプロダクトとして重視している

確かに論文をいっぱい書いておられる先生と著書が多い先生は、わりと分かれる気がします。論文という形式をとるのは、レビュープロセスを経た厳密性を担保するためであり、そういった厳密なエビデンスを蓄積することは重要です。また論文をまとめた著書という形態もあります。ただ実務家の人をエンドユーザーとして想定したときに、Relevanceの意味は変わるでしょう。(Relevanceがいきなり出てきましたが、以下ご参照ください)

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

楠木:そもそも商売事には法則がない、だから戦略が必要になる、というのが僕の立場です。もちろん経営科学者はそうは考えませんが。

 「商売」という表現が執筆者は好きで、すごく地に足がついている気がします。ビジネスってなんか冷たいし、難しそうだし。起業ってのもそうですかね。「商売を始める」ぐらいの軽い感じでよいのではと思っております。

 

楠木:なかなか忙しい生活の中で頭が回らないという人にロジックを提供する。僕はここに自分の仕事を位置付けています。ロジックを使って自分で考えてくださいということです。

 なるほど。フレームワークとかも近いんですかね。考えが整理、構造化、地図化されますし、考えるのを助けてくれる気がします。

楠木:ビジネスのリーダーの場合、どうやったらもっともうかるのか、自分の構想、考えを示してくださいというのが一番いい問いだと思います。その答えが戦略です。

(中略)

「何でもうかるんですか」という問いに向けて骨太なロジックでつながっていく答えがあるかどうか。

 まさに。

 楠木:戦略的な決断というのは、結婚に近いと思います。

(中略) 

正しい結婚というのは何だろうというと、だいたい要素分解して、こういうタイプのこういうふうな女性だと、より良い結婚相手であろうという話になる。なるべく多くのオプションを並べて、一番評価の高い人と結婚するのが幸せである、これが事前正解主義です。でも、それでは絶対幸せにならないと思うんです。というのは、結婚した時点で、もう自分の問題はこれで解決されていると思っているので、結婚後の生活の努力とかに対して、絶対モチベーションが下がる。

 この人と努力をしていきたい、一緒にやっていく未来をイメージできるか、あるいはそのイメージを共有できそうか、みたいなところが大事かと思います。となるとイケメンか美人かとかよりも、きちんと相手の意見を聞ける人なのか、対等に話し合いができるのか、といったコミュニケーションに関する要素の優先度が高くなるのではないでしょうか。

 

楠木:最終的には絶対に「can」じゃなきゃ意味がない。

しかし、時間的な奥行きを持って考えると、自分がやりたいことの方が絶対うまくなります。ですから時間的には「will」が先にあって、結果的にできるようになる。一方、「can」で働くと限界があります。余人をもって代えがたいというレベルでの「can」になると、何よりも、自分がすごく好きでやりたい、やっていて苦にならないということでないとものにならない。それは「will」の問題です。

そろそろ30分の制限時間が来たので、最後に「Will」「Can」のお話で締めておきます。

執筆者も研究対象(プラットフォーム・ビジネスあるいはコミュニティ、場づくり)や研究の方法論(長期的なインタビュー調査やテキスト分析)を選択している理由は、自分が好きだからです。

研究は長期戦ですから、そうじゃないと続かんと思います。ですし、別に無理に続けることもないですね。毎日呼吸をするような感じで、もちろん山あり谷ありですが、細く長く続けていければと思います。

 

以上。

食事と運動で健康にお過ごしください。