商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

先達に学ぶ_Day1:Tucci et al. (2019). Discovering the Discoveries: What AMD Authors’ Voices Can Tell us

さて98日ぶりのブログです。久しぶりに連絡をもらったり、会ったりすると、わりとブログのことを覚えててくださる方がいらっしゃいます。

そういうきっかけがあると「ほな、たまには、いっちょ書くか」と思うので、書いてみます。

(いつもながらBGMはアニソンメドレーです。作業用なのか?笑)

 

今回取り上げるのは

Tucci, C., Mueller, J., Christianson, M., Whiteman, G., & Bamberger, P. (2019). Discovering the Discoveries: What AMD Authors’ Voices Can Tell us. Academy of Management Discoveries, 5(3), 209-216.

という論文です。

この論文を読もうと思った動機は2つありまして(ちょっとコンサルっぽく笑)、

  1. Academy of Management(世界最大規模の経営学会)がこのジャーナル(AMDと略されます)のウェビナーを以前開催されていて、そちらでfirst authorのTucci先生の講演を拝聴し、「ええ感じのおもろそうな人やな」と思った
  2. 最近platform governanceについて論文を書いているのですが、そこで引用する先行研究が2つともAMDという謎のご縁を感じている(ちなみにTucci先生が紹介されていて、その論文の存在を知りました)

ということです。第1のポイントは個人的によくあることなのですが、この人の考えを知りたい(どういう着眼点で、どういう方法論を用いるのか)というモチベーションですね。

そういう観点で読む論文を選ぶことがままあるので、自分の分野とは全然関係”なさそう”なものも乱読します。ただこれが後々自分の研究に効いてきたりするので不思議なものです。

余談ですが以下の論文もPCのデスクトップに積読になっていますが、これはStrategic Management Societyという別の大手の経営学会のAnnual Meetingに出たときに、Prof. Will Mitchelが面白いことをおっしゃっていた(また以前の浅川先生の論文でも登場されていた)ので、指名買いじゃないですが、読もうと思ったものです。今回のTucci et al. (2019)とかなり近い内容かと思います。

Arora, A., Gittelman, M., Kaplan, S., Lynch, J., Mitchell, W., & Siggelkow, N. (2016). Question‐based innovations in strategy research methods. Strategic Management Journal, 37(1), 3-9.

第2のポイントは今回紹介する論文に書かれていることですが、AMDというちょっと変わったジャーナルの特性が影響していると思います。

 

さて前置きが長くなりましたが(というかそこまで色々めんどくさいことを考えていつも論文を選んでいるわけではなく、「なんかこれおもろそう」という直感が先にあって、後で理屈をつけるとこんな感じになります)本文に入ります。

 

まず

Although the “true” story behind a study’s development is often left out of the official scholarly account, that story often provides critical insight into the nature of the discovery and the foundational work leading up to it.

DeepLという優秀な翻訳ソフトで日本語にするとこんな感じです↓

研究の発展の背景にある「本当の」ストーリーは、公式の学術的な説明からは省かれていることが多いが、そのストーリーは、発見の性質やそれに至るまでの基礎的な作業についての重要な洞察を提供していることが多い。

要するに論文というのは最終成果物(完成品)なのでとてもエレガントで美しいのですが、実はその背景 (backstage) にはわりと紆余曲折のドラマがあって、そのプロセスを知るのも大事だよねということです。

こういう「実は~」という話は特にジュニアの研究者にはとても勉強になると思います。

 

AMDにはなんと、そういった裏話が"author's voice"として録音された音声データも併せて提供されているのです。

それを文字起こしして分析したら(ユニークですねw)

we found that authors opted to publish their work in AMD (as opposed to a more traditional journal) because they believed they had a true discovery (that either challenged existing theory or laid the groundwork for new theorizing)

例によって翻訳(すばらしい)↓

私たちは、著者が(より伝統的なジャーナルではなく)AMDに論文を掲載することを選んだのは、真の発見(既存の理論に挑戦したり、新たな理論化の基礎を築いたりする)があったと信じていたからだということを発見しました

だそうです。

さらにAMDのジャーナルに投稿する著者に共通する4つのポイントが明らかになったそうですが、そろそろ時間なので、続編を乞うご期待!

(例のごとくDay1はぎりぎりイントロに入って終わりました笑)