商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

商売としての経営学研究者 (Day1.1)

少し変則的にDay1.1としてみました。下記投稿の続編という位置づけです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

まず、経営学研究者の収入源(生活費、活動資金)は下の二本柱でしょうか。

・授業料

・研究費(国から)

 

で、下の2つの疑問が湧いてきました。

Q1:経営学研究者にとっての「売上」とは何なのか?

執筆者の専門の1つはアントレプレナーシップ(要するにベンチャー企業の研究)でして、創業者が第1に直面する課題が、いかに売上を立てるのか?という問題です。

Q2:経営学研究者にとって(繰り返し)「クライアント」とは誰なのか?

 

Q1について、情報を提供するわけですから、その対価としてお金を受け取ることになります。学生さんに対して、経営学の知識を提供すれば、その対価として授業料を受け取る。あるいはビジネスマンの方むけの講演に呼ばれて(まあそういうことも将来あるかもしれませんね)、ありがたい話をすれば、謝礼、講演料をいただけると。

大学の授業の場合、食べ放題というか、年間定められた金額を払えば、どの先生の授業も受けられるので、その意味では、毎回の授業でチャージが発生してるわけではないですが。

それはともかく、研究者のもう1つの一般的な仕事として、論文を書くということがあります。学会誌に投稿して、アクセプトされれば、それが業績になるという感じです。研究者コミュニティへの貢献の方法としてはこれが最も普通でしょう。

しかし、論文を書いても原稿料はいただけない。むしろ学会に入るのに年間1万円ぐらい(経営学の日本最大の学会=組織学会の場合)かかる。入ると投稿ができて、組織科学という雑誌を購読できるという特典付き。全国大会のときは参加費をまた払う。

この論文を読むのは、だいたいが研究者ですので、みなさん学会の会費を払っている。学会誌には広告記載欄があるので(だいたい学術出版社ですかね)、広告収入もありそう。学会誌を出すのにはけっこう経費がかかるんですかね。あとは事務スタッフさんの人件費とか。

なんか1本1万円とか、特許みたいにたくさん読まれたら(引用されたら)何パーセントかの報酬とか、そういう仕組みはないのか。(今度調べてみます)

 

まあ要するに何が言いたいかというと、論文を書いてもお金にはならない。

もちろん査読付き論文があれば(さらにトップジャーナルであれば)、業績になるので、就職の際には有利です。有利ということは、自分の行きたい大学に行ける確率が高くなるということでしょう。

良い大学とは、研究環境が整っている、学生の質が高い、家から近い、学食がおいしい、などなどでしょうか。京大東大だと国からたくさんお金がもらえるので、資金を潤沢に使えるのでしょうか。(経営学の研究にそんなにお金がいるのだろうか? まあインタビューの文字起こしとか助手さんがいたらなーと思う時はあります。そのお給料の財源にはなりますか)

 

しかし、以上の考察だけを見れば、良い就職をするために、良い論文を書いている、(特に博士課程の学生は)というように見えなくもない。もちろん学問的な興味とか、学術コミュニティへの貢献とかはありますが、すごく現実的な話(主にお金の話)をすれば、良い論文→良い就職、という構図に見える。うーむ。

 

まあこの辺は、アカデミックの就活をしてみないと分からないので、机上の空論はこの辺にしておきます。就活しながら、このあたりの点は検証してみたいと思います。ひとまずはこのルールに則って、がんばりたいと思います。

 

(Q2にたどり着く気がしませんが。。)研究費について一言。

今は国からお金が出ています。税金が財源。

他にお金を出してくれそうなアクターは、企業、個人。

企業から共同研究費としてお金をいただく、というのは別のところで色々と書いた気がするので割愛します。経営学研究者はダイレクトにビジネスの研究をしているので、この辺の営業活動は比較的しやすい、要するに価値が分かりやすいvisibleと思います。

 

一方で、個人から研究費をいただく、これは最近たまに見かける、研究者のクラウドファンディング(以下CF)でしょうか。執筆者がインターンさせてもらっていたVCも、アカデミストという会社さんと研究者支援をしてました。

この場合、リターンを何にするのか、というのは難しそうです。母の日に肩もみ券(権)を渡した遥か昔の記憶がよみがえってきましたが、何かしらの権利を渡すということでしょうか。研究成果について、あるいは研究者そのものについて。

 

時間が来そうですが、ここでちょっと考えたのは、研究者個人がエクイティを発行するという形です。個人の証券化とかICOとかなのかな。(リサーチ要)

株式みたいなのを発行して、その研究者の評価が上がれば、それに連動して株価が上がる。「株が上がる」という表現がある気がしますが、それを似ているかも。

株式は英語で「シェア」なので、その個人の一部を所有する(権利を主張できる)という感じ。よく論文の末尾にAcknowledgementという項があり、「この研究は科研費・なんとかグラントの支援によってうんぬんかんぬん」みたいなことが書いてあります。

まあ資金提供者・出資者・投資家なので、感謝の気持ちというか、何かしらリターンを返さないといけないですね。CFは身内が多いと思うので、リターンは心ばかりのお礼という感じもありますが、ほんとに株式になるとかなりリターンはシビアに求められるかもしれません。親も出資者と考えることもできる。

 

あとは研究者の報酬としてお金以外のもの、例えば、信用、評価rating、紹介、アクセス、ネットワーク(つながり)などなども考えられます。例えば執筆者のような経営学研究者だと、インタビュー調査先を紹介してもらえたりすると、お金をもらうよりも嬉しかったりします。(絶賛募集中ですよ笑)

評価経済という言葉もありますが、『魔法のコンパス』という本に、今はリターンを換金する時期を後ろにずらせるみたいなことが書いてありました。(おすすめの本です。執筆者の机の上にも並んでいます)

 

徳を積み重ねて、いつか返ってくる日を待ち遠しく思っている今日この頃でした(冗談です)

つづく