商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

先達に学ぶ:Bartunek (2007)_2

皆様こんばんは。

前回「次回に続く」と書きながら、かれこれ65日が経過しております、、

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

さて、前回の続きです。といっても執筆者自身もうろ覚えですが笑、いつもながら”研究と実務のギャップ”に関連した論文の紹介だったと思います。

the strength of our logic and our data

we find gaps of some kind, convince others of their importance, and then attempt to fill them in our work

 まず、ロジックとデータがアカデミックの強みであります。そして我々研究者は何らかの「ギャップ」を見つけ、その重要性を説得的に語り、そしてそれを埋めることに取り組みます。

 

Bartunek先生はここでアリストテレス

ロゴス、エトス、パトス

の議論を引用し、特に感情に訴える (tap emotoins) 必要性について述べています。 

 

テキスト、ビジネス書、ラジオ・テレビ、そしてブログなどのメディアが挙げられています。

 

practitioners' knowledge often complements that of academics

ビジネスの実践者の知見は、往々にして研究者のビジネスについての知見を補うものであります。

それで共同研究をするわけですが、研究者と実践者の間には研究についての理解に大きな隔たりがあります。研究者はいちおう(失礼)研究のトレーニングを積んできたプロですから。そのため、共同研究といっても、両者の貢献はイコールではないのは当たり前です。

sense of mutuality

trying to enter into and understand practitioners' worlds and modes of knowing

 "sense of mutuality"とはよい表現ですね。要するに一方向のアンバランスな関係ではあかんということです。

研究者も実践者(実務家よりこっちの表現の方が執筆者は好きです)が見ている世界やその考え方を理解しようと努める、歩み寄る必要があります。

 

require the efforts of boundary spanners, people

1) who do not identify themselves fully with either the academic or practitioner community

and

2) who have the courage and the interest to treat both groups as of value and as having something to contribute to the other

// crossing

おそらくこの部分がBartunek論文のポイントかと思われます。

横串を刺せる人、あるいは境界を渡り歩くような人が必要だと。その条件としては2つあるそうです。研究者でもあり実践者でもあると自認している人、そしてどちらのグループにも互いに提供できる価値があるのだというスタンスで接する勇気と興味を持った人ですね。

"scholar practitioners"とBartunek先生は呼んでいるようです。

こういう人たちは

who consciously move back and forth between academia and practice

 意識的に両者を行き来しています。例えばMITのSchein先生を挙げています。

 

そして研究者と実践者が議論をする”フォーラム”が必要だということです。"explore together"という表現も執筆者的にぐっときました。

 

cross bar......being broad and secure enough to carry many people regularly going back and forth between research and practice

 研究と実践の間を、多くの人が日常的に行き来できるような、十分に広く安全なクロスバー(橋かな)ができたらいいなーという結びでした。

 

まあ要するに対話の場を設けるということでしょうか。すごく雑なまとめで恐縮ですが笑

ただやはり研究と実践のどちらにもそれなりに詳しい人、というのはなかなか稀少かと思います。執筆者はそんな存在になるべく、いろいろ画策中でございます。

 

あと1分ぐらいで30分です。

研究と実践の交流を促す「窓口」「案内人」「目利き」のような立ち位置でがんばりたいと思います。

いつもながらまとまりのない論文紹介でしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

また同じようなテーマのものを見繕って、このブログという場でご紹介したいと思います。

 

それではまた近いうちに(たぶん、、)

先達に学ぶ:Bartunek (2007)_1

皆様こんばんは。珍しく連続で更新している執筆者です。

さてご覧のとおりブログ全体のタイトルを「アカデミックな読書メモ」から「商売としての経営学研究者」へと変更しました。

最初は読書メモ(現在270冊ほど)を載せようと思っていたのですが、なんとなく方針転換して、経営学研究について考える場にしたいとシフトしました。

 

さて、本日は前回に引き続きAMJ(このブログを読んでいただいている経営「学」がお好きな方には共通理解のはず)からです。

Bartunek, J. M. (2007). Academic-practitioner collaboration need not require joint or relevant research: Toward a relational scholarship of integration. Academy of Management Journal, 50(6), 1323-1333.

読んで字のごとく、Academic-practitioner collaborationについてのお話です。執筆者はこのテーマにとても興味を持っています。

How management research might have an impact on management practice has been of concern since at least the beginning of AMJ in 1958

まず、経営の研究(経営学)がマネジメントの実践(現場)にどのようにインパクトを与えることができるのか、というテーマについては1958年以来ずっと考えられているそうです。

the Academy's employing Ben Haimowitz as our public relations director, which has been accompanied by increasing attention over the years to making our work known to others through articles in newspapers and other media

学会では広報の人を雇って、新聞や他のメディアで私たち経営学者の研究を発信しようとしているそうです。確かに経営学の知見は需要がすごくありそうですが、依然としてアクセスするのが難しい状況だと思います。

Action research, a method in which, in theory at least, practitioners and academics collaborate to address important organizational issues and make scholarly contributions as a result

現場人と研究者が協働して、重要な組織的課題の解決に取り組み、論文を書く、という「アクションリサーチ」や、practitioner-oriented doctoral programs(いわゆる社会人博士課程)があるそうです。(in theory at leastという表現からは、少し批判的な香りがします笑)

さてrigorous / relevant、すなわち学問として厳密rigorousであることと、現場と関連性の高いrelevantテーマを扱うことを両立することが、重要だと経営学の分野ではしばしば言われます。(うまい表現です)

 

しかし、それを実践することは簡単ではないとBartunek先生は指摘します。(やっぱり)

Do they expect management practitioners to read (this section of) the articles?

How and how much are they trying to convince potential users of their research about its value and applicability?

Is their communication style likely to be persuasive?

 だいたいの経営学の論文には最後のほうに(ちょろっと)実務への貢献practical implicationというセクションがあります。でもそれってほんとに現場人が読んでると思ってるの?という1つ目のクエスチョン。

研究のユーザーとなる人にどんだけその価値と適用可能性を説明しようとしてるの?というのが2つ目のクエスチョン。ユーザーという部分に執筆者は下線を引きましたが、まさにBartunek先生のおっしゃる通りです。

だいたいの論文は学術コミュニティのメンバーが読むことを想定していると思いますし、それでいいのだと思います。しかし、経営学ですよ。ビジネスの研究のユーザーとしては当然現場人も想定されるべきじゃないのか。もちろんそれを論文で実現する必要があるのかは謎です。論文は論文ですから。なので『世界の経営学者は~』が売れたのだと思います。一橋の楠木先生の本も売れる(たぶん)のだと思います。研究のアカデミックな知見を踏まえた、ビジネス書がもっと出てくると良いかと思います。

それを書くのはおそらく研究者だけでは難しいでしょうから、現場の経験豊富な方との共著、あるいは『嫌われる勇気』のような対話形式も面白そうです。例えば日々何かしらの経営的課題に直面するビジネスパーソンの方がお悩み相談をするみたいな。(出版社の方、ご連絡お待ちしております…笑)

 

すごく脱線しました。あと3分しかありません。笑

あ、3つ目のクエスチョン忘れてました。経営学の知見を伝える方法は、ほんまにそれでええんか?ということですね。このブログがそのような機能を果たせているといいなーと思いますが、そのためには色々と改善点がありそうです。

ということで、明日は月曜日です。

次回に続く

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

商売としての経営学研究者:Rousseau (2006)

大変ご無沙汰しております。

前回の記事は82日前だそうです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 この「商売としての経営学研究者」というシリーズは147日前だそうです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

ほぼ5か月ぶりとは、、

実は上記の記事をご本人がお読みになったそうで(お恥ずかしい)、ご連絡を頂き、12月にお会いすることになったので、それまでに色々と考えておこうと思って再開してみました。すごい偶然もあるものですね。

さて前置きはこのくらいで、カテゴリーは「先人に学ぶ」です。

今回は

Rousseau, D. M. (2006). Is there such a thing as “evidence-based management”? Academy of Management Journal, 31(2), 256-269.

という論文をご紹介します。経営学をまなばれている方ならみなさんご存知のAcademy of Management Journal(略称AMJ)です。アメリ経営学会(AOM)が発行している世界のトップジャーナルです。

このルソー先生は心理的契約 (psychological contract) などの概念で存じ上げておりました。

さてタイトルのとおり、「エビデンスに基づいた経営」なんてものはあるのか?あるとしたらどんなもんやねん?という内容です。

近い内容だと『事実に基づいた経営』という本がありますので、ご興味のある方は一読をお勧めします。論文のレファレンスが充実しており、入山先生の『世界の経営学者は(以下略)』とかお好きな方には特におすすめです。

 

さて残り21分で書かないといけないので、ぼちぼち本文に入ります。

まず

continue to rely on personal experience

ビジネスの現場はいわゆる”経験と勘”に依然として頼っているという指摘がされています。そして

research-practice gap

すなわち、研究と現場に溝がある、というお決まりの表現も出てきます。

エビデンスに基づいた~(例:政策、医療)というのはバズワードであります。

participation in research increases the salience of the evidence base

研究(のプロセス)に参加することによって、エビデンスに基づいた経営が増えるんじゃないかと。

しかし今日の組織が自ら経営に関する研究を行ったり、あるいは日常業務において経営学研究者とコラボしてることはほぼない。そういう産学連携から得られるベネフィットは大きいはずなのにと。

few organizations today do their own managerial research or regularly collaborate with those who do, despite the considerable benefits from industry-university collaborations

この点に関しては執筆者も一言あります。

企業のR&D部門はだいたい製品開発(例:自動車、医薬品、家電)に関する研究は行っていますが、組織やマネジメントについての研究部門を社内に持っている企業は少ないのではないかと思います。

同様に、産学連携はいわゆる理系では多い気がしますが、文系はあんまり見かけないような気がします。「いやいや、そんなことないで。うちやってるで」というお話があればぜひお知らせください。

なのでGoogleのProject Aristoteles(つづり間違ってたらすいません、アリストさん)とかはいい取り組みだなーと思います。心理的安全というキーワードにご興味のある方は、ぜひぐぐってみて下さい。

 

ただ大学側にも問題はあるようで、

Research evidence is not the central focus of study for undergraduate business students, MBAs // case examples

例えば、経済学部やMBAの授業で学ぶことには、あまり研究から得られたエビデンスが盛り込まれていないとルソー先生は指摘します。Harvard Business Schoolのようなケーススタディが多いと。

そもそも論文を読むことが少ないみたいなんですよね。執筆者の先生の学部ゼミでも、この前聞いたら、4年間でほとんど読んでないそうです。

もちろん読むことを課題として与えられていないというだけで、熱心な人は自主的にお読みになっていると思います。執筆者も経済学部出身ではないのですが、(むしろだからこそ?)経営の論文は学部のときからよく読んでいました。

エビデンスというのは例えば

how, when, and why 360-degree feedback might work (or not)

ということを教えてくれたりします。先行変数antecedentsや調整変数moderatorといったものですね。

the easiest teaching I do has always been to executives, because these experienced managers come to the program convinced that human behavior and group processes are the most critical things they need to learn

でもやっぱり経営幹部の人に教えるのが一番やりやすいとルソー先生は言います。彼らは社員(グループ)の行動が最も学ぶべきものだと思っているから。要するに自らのマネジメント経験から問題意識があって、学ぶ意欲が高い状態にあると。

balance between teaching principles - that is, cause-effect knowledge - and practices - that is, solutions to organizational problems -

だから原理原則(因果関係)についての知識と、現場で起きている問題の解決策のバランスを考えなきゃいかんと。要するにWhyとHowのバランスですね。

turning evidence-based management from a practice of a prophetic few into the mainstream requires champions - credible people like Pfeffer and Sutton's managerial heroes - to advertise its value

Networks of individuals, excited by what evidence-based management makes possible, need to exist to disseminate it to others

 最後にそういうものを広めていくには、チャンピオン(あるいはヒーロー)のような人が必要だとルソー先生は述べています。エヴァンジェリストとも言えるかもしれません。執筆者は"academic practitioner"という表現も好きです。

そういうエビデンスに基づいた経営というものを取り入れることで実現される会社(もっと言えば社会)というものにワクワクしてる人、つまり学問の力に理解がある、あるいは確信を持っているビジネスパーソンが増えたらいいなーというお話でした。

 

そのためにはまず研究者自身がその力を確信していること、自信を持ってお勧めできる研究を知り、また自らも行うことが不可欠なのではないか、と執筆者は思います。

引き続き、ResearchとPracticeの関わり方について考えていきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

写真で振り返る滞在:ロッテルダム (Day3)

少し間が空きましたが、オランダ(ロッテルダム)の大学、建築を振り返り、今回はその他、滞在で気づいたことをばーっと書き連ねます。

 

まずは滞在中に見つけた本たちをご紹介。

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まずはみなさんご存知『はらぺこあおむし』の絵本です。

オランダ語を解する知人に見せたところ、子どもの教育向けの内容ではないかということです。

執筆者も小さい頃に読んで、今も家にあるので、そんな本とロッテルダムという異国の地で再開するとは、とすこし(約5秒)感慨にふけっていました。

著者であるエリック・カールさんはアメリカの方だそうで、世界中で読まれている絵本ということでしょうか。

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この2冊はスキポール空港で見かけました。

左は小さいですが『嫌われる勇気』、右は『コンビニ人間』です。売れてる本コーナーにあったので、ほんまかいなと思いながらも、すごいなーと(10秒ほど)思いました。

村田沙耶香さんの日経新聞夕刊(確か)のコラムおもしろかったです。

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この『配色事典』はなぜかTilburgという場所にある「Textile Museum」で売ってました。海外に行くと日本語とか、日本食レストランとか、そういったものにすごく意識が向く、というか、目が吸い寄せられる気がします。

逆の立場では、外国の方が日本に来たときは、少しでも母国語のアナウンスや、母国のレストランがあると安心する、あるいはつい入ってしまうのかもしれません。

じっさいロッテルダムの中華料理店に行きましたが、中国の方が多く来店されていた気がします。せっかくオランダに来たのだから、自国で食べられないものを食べればいいのにと思いますが、人のことは言えませんね、、笑

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13ユーロもしましたが、本格的なラーメンでした。ちょっと油分が多かったですが、、@天才ラーメン

 

食といえば、マクドナルドはどの国にもありますね。

執筆者がオックスフォードに行ったときも、シカゴに行ったときも行きました。シカゴもそうでしたが、でかいタッチパネルのような機械が入るとすぐにあって、それで注文する仕組みになってます。

しかし、朝マックはあんまりおいしくなかった。作り置きのようで、ベーコンがぱさぱさでした。

前にMBAの授業で留学生の人たちが「マクドナルド、ふふ」みたいな反応でしたが、日本のマクドは一味違いますよ。(本社は新宿)

まあ空間と景色は良かったので、及第点としましょう。

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少し戻りますが、Textile Museumの様子を少し。

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この織機は以前「ブラタモリ」の西陣の回でも出てきましたが、ジャガード織りの機械だそうです。

パンチカードを読み込ませて、模様を再現します。

下はより近代的な設備です。

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ドルニエというドイツのメーカーと、ストーブリというスイスのメーカーのものがありました。

日本だと豊田自動織機トヨタ自動車との関連では有名ですね。

ロッテルダム近郊の醸造所でもTOYOTAフォークリフトが活躍してました。

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これを作っているのはトヨタではなく豊田です。

 

最後に、乗り物について。

ロッテルダム中央駅を出てすぐに路面電車が目に入ります。(個人的に滞在中で一番気に入ったものかもしれません)

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で、以下がスキポール空港ロッテルダムを結ぶ「インターシティ・ダイレクト」の車両です。

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いずれもアルストムというフランスのメーカー製だったと思います。たぶん

世界の鉄道メーカーは他に、ボンバルディアシーメンスなどがあるそうです。

あんまり海外の鉄道オタクという人は聞きませんね。

 

さて、観光地っぽい写真は一枚もなかったと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました。

やはり海外に行くと学びが多いです。(旅行よりも留学で、グループよりも単独で)

以前読んだ記事でMITの石井裕先生が「独創・共創・競創」と「他流試合」、そして「海外雄飛」が大事だとおっしゃっていました。Strongly agreeです。

ではまたお目にかかりましょう。

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(おわり)

 

*参考

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

写真で振り返る滞在:ロッテルダム (Day2)

さて、前回はエラスムス大学ロッテルダムを紹介したので、今回はロッテルダムで見つけた建物を載せておきます。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

(BGMはいつもながらアニソンです。GARNiDELiAの「SPEED STAR」を聞きながら。「劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」の主題歌だそうです。オランダのフラッグキャリアであるKLMに乗ったのですが、機内ボーイング777の日本の音楽のカテゴリーはやたらとアニソン比率が高かったです笑。でも日本のアニメはnot availableでした)

さて前置きが長くなりましたが、まずはロッテルダム駅(Rotterdam Centraal)から。セントラール。

やたらと駅前の広場が大きいです。銀の部分はアルミっぽい素材でした。(建築の知識は皆無なので当てずっぽうです)

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ちょっと右のほうが切れてます…個人的には京都駅の方が好きです。

別に鉄道ファンでも何でもないですが、行きに乗ったはるかはハローキティラッピングでした。海外でも人気は高いそう。

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さて気を取り直して、ロッテルダム市役所です。立派。

ガイドさんの話では確か1940年の空爆bombardment/blitzでも被災を免れたそうです。

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中庭もわりときれいです。

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あとアパートみたいなのもありました。駅前かつ雰囲気が良さそうで、お高そうです。

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何ともいい感じの曲線でした。ベランダの様子からもちゃんと人が住んでる感じがします。

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こちらはどっかの駅前の写真です。非常に近代的なビルが多いです。

ただシカゴに行っても思ったことですが、近くに行くとそんなにきれいでもない。特に掃除がちゃんとされていない気がします。道もがたがたですし。そのあたりは日本の丸の内エリアはきれいにしてはるなーと感服します。当たり前ですが建てて終わりではなく、それを継続的に手入れmaintenanceしていかないと、劣化してしまいます。

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こちらはロッテルダム海洋博物館Maritiem Museumの前です。すごく”ぽい”感じです。

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ちょうど真ん中奥に見える3本並んだビルはDe Rotterdamというそうで、かっこいいです。ホテルとか入ってるようです。

別角度から。手前は海ではなく、ニューウェ・マース川です。ロッテルダム橋です。左右非対称です。

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博物館はこんな感じ。コンテナ船の説明や港の変遷など面白かったですが、入場料が14ユーロ(確か)というのはちょっと高いですかね。もう少し良心的な価格設定をお願いします。

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手前の彫刻は爆撃のメモリアル的なものだったと記憶しています。呉と『この世界の片隅に』を思い出しました。

 

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ちょっとズームできてませんが、中央の浮いてる箱のようなものはUnileverのビルです。またいでいる建物はマーガリン工場だったそうです。

企業つながりだと、

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大手監査法人Ernst & Young

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AON

等が近くにありました。グローバル企業ってすごいですね。

下はロッテルダム中央図書館(これも変わった外観)から見た、マルクトハルというショッピングセンターです。写真で見てたほどすごくはなかったです。いろんな屋台のようなお店が出ており”屋内広場”のような感じでしたが、人が多かったので、地下のAlbert Heijnでパンを買って退散しました。ちなみにAlbert Heijnはオランダで大手のスーパーで、1887年創業だそうです。無人レジデビットカードのみ)が大半ですが、有人のものもありました。レジの人は総じていい感じでした。

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ひとまず今日はこの辺で。

次回に続く。

 

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写真で振り返る滞在:ロッテルダム (Day1)

執筆者は、サマースクールに参加するべくロッテルダムに1週間ほど(8月下旬)滞在しましたので、今後滞在される方の参考になればと思い、写真も交えつつ振り返り、まとめます。

4年前ぐらいのスマホで取ったものなので、画質は期待しないでください。

あと視点は、企業、建築、景観などが中心です。いわゆる”観光情報”は皆無ですのでご了承ください。

 

さて、ロッテルダムについて事前に知っていたのは

・ヨーロッパ最大の港があること

・第2次大戦の空襲で街が焼け、新しいビルなど斬新な建築があること

などでした。ちなみにエラスムス大学ロッテルダム(以下EUR)に主におりましたが、そこのビジネススクール(Rotterdam School of Management: RSM)にはCorporate Communication Centerというのがあり、組織内のコミュニケーションに関心があったときに、そこに在籍されている先生の論文を読んで以降、注目していました。RSMには日本人会もあるようで、コンタクトを取りましたがちょうど夏のstudy tripの最中とのことでした。残念。

(なんでビジネススクールの名前にエラスムスが入ってないのでしょうね)

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RSMの先生方はマンデビル・ビルディング(言いにくい)におられるのですが、マンデビルというのは皆様ご存知?の『蜂の寓話』の著者だそうです。以前に労働思想や仕事観について調べていたときに目にした記憶があります。(読んでません)

ちょっと7FのTaco先生にお会いできる機会があったので、1時間ほど(蜂に襲われながらスタバの前で)お話してきました。すごく実績がありながら(経営学のトップジャーナルであるSMJやAMRにパブリッシュ)、とても親切な先生でありがたかったです。パブリッシュの秘密secretも教えて下さいました。やっぱり基本が大事だと思いました。

ヨーロッパでMBAを考えておられる方にはRSMも1つの選択肢かと思います。他にもフランスのINSEADやスイスのIMD、スペインのIESEなども有名ですね。それぞれ特色があるのでしょうが、1つの基準としては卒業生almuniのネットワークが挙げられるでしょう。建物にも写真があちこちに貼ってありました。

(身びいきですが京大もいろんな国の人が来ているので、diversityを求める方にはいいかもしれません)

 

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こんな感じのきれいで大きなキャンパスです。やたらと道幅が広い気がしました。

 

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いわゆる大学生協みたいなものはなく、SPARというスーパー(世界最大らしい?)が入ってました。当然ながら無人レジで、クレカは使えました。

特に安くもないですが、電子レンジはパナソニック製で「お!」となりました。よく日本のコンビニにも置いてある(あった)機種です。最近はハイアールなども増えてきた気がします。

 

図書館もいい感じの吹き抜けがあって、良い空間でした。(特に入館カードなどなくても入れたので、うとうとしながら論文を読んでました)

サイレントエリア以外はおしゃべりできるようです。それでも大声で話す人はおらず、その辺はマナーということで。

 

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(どー見ても顔にしか見えない)

 

ちなみにロッテルダムの駅前からはトラム(路面電車)の21か24に乗れば、20分ほどで着きます。

電車を待っているとポーランド人の学部1年生に話しかけられました。Applied Science学部だそうで、アジア(特に中国)経済を勉強するようです(日本も勉強してね)。オランダで働きたいと言ってました。その辺の移動が自由なところがEU圏の良いところでもあり、人口流出や物価の点で悪いところでもあります。

確かにロッテルダムの駅前にはユニリーバ、KPMG、シェルなどがあり、オランダの3大銀行(ING、ABN-AMRO、Rabobank)、EYやAON、他にも貿易や海運関係の企業も多く、仕事の選択肢は広い気がします。

 

今夜はこの辺で。

次回に続く。

 

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商売としての経営学研究者:浅川 (2019)

皆様こんばんは。

いきなりですが、執筆者は「組織学会」という日本最大の経営学会の会員でして、年会費(安くない)をお納めしています。その特典として、学会報告ができる、学会誌「組織科学」に投稿できる、そして「組織科学」が郵送されてくる、といったものがあります。

で、一昨日ぐらいに最新号が送られてきました。

正直なところあまり期待していなかったのですが、タイトルが「特集:質の高い研究論文とは?」だったので、「おや?」と思って読んでみたら、わりと当りでした。

今回は慶応大学の浅川先生の論文を取り上げていますが(個人的ベスト)、他にも(この業界では著名な)神戸大の鈴木先生同志社(長らく一橋大)の佐藤先生、東大の藤本先生などなど、錚々たるメンバーでした。

前置きはさておき、本題に入ります。

 

浅川和宏 (2019)「経営研究の国際標準化時代における質の高い研究の条件:日本からのアプローチ」『組織科学』52(4), 4-12.

以下から無料で読めます!

経営研究の国際標準化時代における質の高い論文の条件:日本からのアプローチ

 

浅川先生とは以前の組織学会で少しお話させていただき、英語が上手という褒め言葉をいただき気をよくしました笑。どんどん時間が無くなりますね。。

まあ略歴とかは「慶応 ビジネススクール 浅川」で各自調べて下さい。この論文を読めばすぐに分かりますが、すごい先生です。

 

幸か不幸か日本の経営研究は世界標準化の流れの蚊帳の外にあり、依然かなりの独自性を維持している」

下線部がポイントです。

経営学ではRigor & Relevanceという2本柱が研究の質についてはよく用いられる概念です。以下ではそれを2つずつに分けて論じられています。経営学の研究に興味がある人以外は、「へー、そうなんや」と思って読み飛ばしてくださってけっこうです。

1)Rigor
・Methodological rigor「科学的厳密性」
・Conceptual rigor
「理論、概念モデルがその研究領域において受け入れられた作法に準拠して定義、提示、検討されているか」
「理論仮説を根拠づけるだけの厳密な概念定義と当該分野の研究動向との正確な理論的関連づけが欠けている」// George, 2012 AMJ 4p
2)Relevance
・Practical relevance「実務界にとっての適合性、有用性」
・Academic relevance「特定の学問領域にとっての関連性」

 

さて

「何よりも自分の研究分野におけるアカデミック・コミュニティーを国際的に持ち、常にその中で対話をすることで自分の研究水準をチェックすることが重要」

とのことです。激しく同意です。前にアメリ経営学会@シカゴ(世界最大の経営学会、AMJやAMRといったトップジャーナルの発行主体)に行ったときに思ったことですが、別に欧米人の真似をする必要はないですし、日本の大学院にいても十分にレベルの高い研究はできますが、国際水準の研究をすることは外せません。(当たり前か。。)

 

「最初の段落に、トピック、既知の知見(通説)、本研究で埋める予定の研究ギャップ、研究設問が明示されていないものは、全体が曖昧だといつも強調している」(Will Michell)
「論文の貢献(contribution)が明確に記載されていない論文は話にならない」(Mike Peng)

と有名な先生方がおっしゃっているようです。

 

それに対して、

「日本の経営研究論文の多くは、その素材の素晴らしさにも拘わらず、残念ながらその必要条件である国際標準の方法論・概念的厳密性(rigor)を満たさず、ランクの高い国際ジャーナルから早い段階でリジェクトされてしまう」
「厳密性(rigor)を満たしてこそ世界の経営学者にまじめに読んでもらえる、いわば入場券を得ることが出来る」

「入場券」というのは良い表現ですね。執筆者も中学受験(TDJ)のときに小学校の先生(恩師)に、受験ってのはチケットだみたいなことを教わりました。その後の選択肢も広がるし、そもそもその世界に入らないと見えないものもあるという趣旨だったと思います。まずはつべこべ言わずに土俵に立つための修行をせよということでしょうか。

 

ただアメリカでは投稿競争が激しいことの弊害として、短期的に結果の出やすい研究(定量)が(特に身分の不安定な若手で)多く取り組まれているという問題点が指摘されています。それに対して日本は、

「リスクを覚悟で斬新な理論や方法論を導入することが許される贅沢な環境」

アメリカと違い、一定期間内にかなりの本数をトップジャーナルに掲載できなければ失職するほどのプレッシャーにはまだ置かれていないから、思う存分リスクを冒して斬新なものにチャレンジできる土壌が日本には残っている

と。ちょうど最近、執筆者も同じようなことを考えていました。執筆者はケーススタディ(定性的研究)をメインで取り組んでいます。これは論文になりにくいと言われており、リスキーですが、その分、新たな理論を構築できる可能性を秘めています。特に執筆者が対象とするプラットフォーム・ビジネスの立ち上げプロセスについては、先行研究の蓄積が少なく、分析の手がかりがつかみにくいという困難はありますが(日々直面中。。)、当たれば目新しさはありそうだなーと、ぼんやりと思っています。

要するにこういう研究に取り組むには、今の日本の経営学を取り巻く環境は最適ということでしょうか。

ただ、裏を返せば”ぬるま湯”ということとなので、その状況でも自分を鼓舞してチャレンジを続けるのは、難しそうです。だからこそたまに海外に行って、現地のすごい人と接して、「あ、やべーな」と刺激を受ける、負けまいと思うことが必要かと思います。

「いくつものジャーナルにリジェクトされ続けても淡々と修正・改良し、投稿し続ける地道な努力を長年にわたりできる気力と忍耐力と情熱がカギとなる」

がんばります。

「日本においては、研究者が若いうちから自分の愛するテーマに出会い、ライフワークとしてパッションをもって打ち込める環境、(いわゆる海外ジャーナル論文量産という)短距離走では勝てなくとも、(集大成的業績をあげるという)ラソンで勝利する可能性が備わっていると考える」

いだてん。眠くなってきて変なことをつぶやいてますが苦笑、研究者人生は修業期間が長い(あるいはずっと修行)長期戦だと思うので、若い頃にうまく立ち位置というか自分が進んでいく方向感覚(sense of direction)がつかめるといいかなーと。

「日本を拠点に国際的に評価される論文を発信していかれる方々」

 はい、執筆者が目指すポジションです。

なかなか中身の濃い特集号なので、定価1296円ですが、ぜひ手に取って、ご覧になって下さい。(ここまで読んで下さった方、チラ見せで良ければ、持参して参上します)

それではよい週末を。