商売としての経営学研究者

経営学の研究者を商売にするということにまつわるあれこれを考えてみる場です。

商売としての経営学研究者:楠木 (2010)

前回の記事から16日が経過したようです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

今日は「はてなブログ」の開発者さんにお話を伺う機会があり、現在に至る経緯や設計への思いを伺うことができました。この場を借りて感謝申し上げます。(オフィスは京都の御池通り沿いにあります)

ということで、久しぶりに書こうと思い至りました。

 

さて、前回に引き続いて、「商売としての経営学研究者」に関係しそうな先行研究を読んだので(研究者の基本動作)、この場で軽くご紹介しておきます。

一橋大学の楠木教授の『ストーリーとしての競争戦略』という本です。よくご存知の方も多いかと思います。(特にこの本が売れても執筆者には1銭も入らないので、その点はご安心ください笑)

 

さて例のごとく、引用してちょっとちゃちゃを入れる、もとい、コメントしておきます。(すべて1章からの引用です。ページ数はメモしない主義なので、ご興味ある方は、他のセンテンスとの偶然の出会いを楽しみつつ、探してみて下さい)

「経営や戦略を仕事として実践している人々とのインターフェースがどうあるべきなのか」

 前回の論文では"research-practice gap"という表現でした。これは執筆者が(細々とですが)考えていることであり、経営学研究者としての道を進むうえで、考え続けなければならない問いだと思います。

 

「学者とは、さまざまなけもの道を走っている人を眺めながら考えているという人種です。実務家に見えるものが学者には見えません。ましてや、迅速で適切なアクションもとれません。立ち止まっているからです」

 さすが楠木先生、という感じのかっこいい表現ですが(面識はありません)、特に下線部(by執筆者)が言い得て妙だなと。

これは学者と実務家の双方に言えることで、お互いに見えてるもの(あるいは、見ようとしているもの、景色)が違います。

「私は学者と実務家がやり取りすることには意義があると思っています」

だからこそ、コミュニケーション、対話をすることで何かが生まれそうな気がします。ただ、それが何なのか、という成功事例みたいなものは未だ十分に社会的に共有されていない、という点は対話が進まない一因かもしれません。

「理屈じゃないから、理屈が大切」「気合の輪郭」

経営していくうえで(この本では競争戦略を考える上で)、理屈が 2割、気合が8割だそうです。気合というのは、肌感覚というか、商売のセンスというか、そういう経験に裏打ちされたもの(この本では「フォーム」)を指します。経営学でも経営判断における直感 (intuition) の役割みたいな研究もけっこう前からあります。

 

「視点を転換し、視界を広げるために、他のさまざまな業界や企業や経営者に学ぶ必要が出てきます」

 これは、研究者にも言えることでしょうか。だからこそ異分野交流会(アカ談

acadan-kyoto.hatenablog.com

を含む)

成功例だと東大のカブリ数物連携みたいなところもあります。この場の設計の仕方、コミュニケーションの促し方は非常に勉強になります。おすすめ

こういう異業種から学ぶことは大事だと頭では分かっているが、その学びには普段よりも負荷がかかるので、ちょっとハードルが。。。みたいなことはありそう。

だからこそ交流会とか、そういう場を設けてもらうと参加したい、みたいな人が続出するのでは。


「いったん論理化して汎用的な知識に変換しておけば、(具体化能力のある)実務家は、その論理を異なった文脈に利用できるわけです」

言い換えれば抽象化。整理という表現も個人的には好きです。(これは友人の指導教官である東大経済の福田教授がいってはりました。関西弁注意)

整理はいざやってみると簡単そうで非常に時間と労力がかかることが分かります(ちょうど実感しているところです。コンサルタントの人すごい)

「逆にいえば、新しい実践へのきっかけを提供できない論理は、少なくとも実務家にとっては価値がありません」

 おっしゃる通りですね。楠木先生が支持される理由がよく分かります。プロ意識。

もちろん学術コミュニティへの貢献というのもありますし、学術論文ではそちらのウェイトは大きいと思います。またその成果(往々にして難解)を読んで、実践に生かせる洞察を引き出せる実務家さんもいらっしゃると思います。(それが"academic practitioner"でしょう。近々研究会をしようかと思うので、ご興味ある方はご一報ください。おそらくここまで読んでくださる方は多くないと思いますが。。笑)

ただし、研究者側も、多少噛み砕いて説明することを心掛けることが、サイエンスコミュニケーションとしては望ましいと思います。お互いに歩み寄る。

 

というわけで30分ほど経ちそうなので、今日はこの辺で。

よい週末を。

商売としての(以下略):Amabile et al. (2001)

前回の記事↓で中間報告として一応まとめてみました。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

研究というのは先人のつけてくれた道(あるいは滑走路)の上を進んで、さらにその先に道をつくること(この部分が学術的な貢献となる)だと思うので、この「商売としての経営学研究者」というのを考えている先人がいないかと思ってGoogle Scholarで検索してみました。あっさりヒットしたので(しかもハーバード大のアマビール教授、創造性creativityの研究で有名)、ここで少しご紹介します。

 

まずタイトルの下線部がいい感じに執筆者の問題意識と関連しています。

Amabile et al. (2001). Academic-practitioner collaboration in management research: A case of cross-profession collaboration. Academy of Management Journal, 44(2), 418-431.

このテーマ(研究者と実務家のコラボ)自体を研究するというのもすごく面白そうです。

(ちなみにこのAcademy of Management Journalというのは経営学のトップジャーナルです。Scholarでもアブストラクトは読めるので是非ご一読ください)

 

英語なので、基本は原文のままで、一部下に日本語をつけます。 

management research entails significant challenges at the interface between the world of the academic researcher and the world of the business practitioner

まずアカデミックの研究者とビジネスの現場のインターフェースが重要かつ難しい(チャレンジ)。

framing research questions in a way that will be meaningful to practitioners, gaining access to sites for field research, designing data collection instruments and methods appropriate for today's work- force, and interpreting results accurately within the business context

例えば、現場(実務家という表現があまり好きくないのでgenbaとしてます)にとっても意味のある問いを設定する、調査フィールドへのアクセスを得るなど。

 

コラボの説明変数として以下の3つが挙げられています。

1) Collaborative team characteristics=チーム

common core of understanding

appropriate selection of collaborators

trust

practitioners’ intrinsic interest in the research

cultural differences

 印象に残ったものを抜粋。

要は「誰とコラボするか」が大事だと。

先日のブログで"academic practitioner"という言葉を使いましたが、ここでも同じような点が指摘されています。

共通理解、信頼、研究への関心などがあれば、研究とビジネスの世界の文化の違いも乗り越えられるだろうと。

 

2) Collaboration environment characteristics=環境

 

3) Collaboration processes=プロセス

creative tension (Senge, 1990)

MITのセンゲ教授の本が引用されていました。

 

4) Collaboration outcomes=アウトカム

コラボのアウトカム(成果変数)を何に設定するかというのは重要な問題です。

firm-level increases in productivity (such as new product development) and financial profitability

progress toward achieving the goals of the collaboration, effective team functioning, and benefits for the individual members of the collaboration(例:学び)

 企業レベルの生産性や収益性の改善なのか、チームレベルの目標達成なのか、はたまた個人の学びなのか。

  

frustration

wide diversity of problem-solving styles

willing to work through these frustrations in part (1) because of their high intrinsic interest in the work and in part (2) because they shared a strong value with the academics, a high regard for the importance of research

warm personal relationships (that were developing through the social activities and growing familiarity within the IRG team)

 で実際にアマビール先生たちが行なった共同研究プロジェクトを研究対象にしたそうです。

最初はメンバーの一部がフラストレーションを感じたそうです。その一因はそれぞれ(アカ7人、現場7人)の問題解決スタイル(あるいは文化)が違うから。

それでもそのフラストレーションを解決すべく動けたのは、その共同研究への高い関心、アカデミックの重要性への高い評価、さらに個人間の関係が良好だったから。

またリーダー的な役割の人がいて、その人のファシリテーションもよかったようです。

 

cross-profession collaboration

who come together primarily as individuals (not formally representing their organizations)

 以上のような研究者とビジネス現場のコラボは、大学と企業といったいわゆる「産学連携」とは少し枠組みが違います。というのは、それぞれが大学・企業を代表しているのではなく、あくまでも個人としてその共同研究に臨んでいるからです。

より一般的には職業の壁を超えたコラボは研究領域としても今後おもしろいのではないかと論文は結ばれていました。

 

2001年の論文なので約20年後の今はもっと状況は改善されていると思います。引き続き論文を読みつつ、執筆者自身が実験体となって取り組みを続けていきたいと思います。

 

商売としての経営学研究者:中間報告 (Day1)

 

「商売としての経営学研究者」というタイトルで、5記事ほど書いてきました。ありがたいことに、各所からご意見・ご助言をいただき、少しずつこの試みに輪郭が付与されつつあるのかなーと感じておる今日この頃です。この場を借りてお付き合いいただいている皆さまにお礼申し上げます。

さて、中間報告ということですが、まあアニメの6話ぐらいに出てくる(最近はあまりないですが)総集編のような気持ちで、少しお付き合いください。

問いの形にしておくのが大事かと思ったので、ところどころ「?」が出てきます。解っぽいものを思いついた方は執筆者までご一報ください。(何かお返しがあるかも!? 期待しないで下さい笑)

 

  • 活動資金、生活費

大学から授業料

国から研究費(科研費とか)

→ その他?

元々のモチベーションです。他にもお金を稼ぐ、資金調達をする方法があるのではないかと思って、模索をしている最中です。

 

 

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図1:自分(me)の立ち位置いろいろ

(PBはプラットフォーム・ビジネス、VCはベンチャー・キャピタル、AMはアセット・マネジメント)

(四角で囲っているものが仲介者あるいはプラットフォーム)

今のところ大学を介さないと授業料という形での収入を得られない構造になっているように見えます。経営学には資源依存(resource dependence)理論というのがありますが、要するに依存しているとパワーを握られるということです。ポートフォリオが大事かと。

介してindirectの部分で、以前に某大手広告代理店さんがファシリテーションをしているワークショップに参加したことがあります(自動車のT社の方がいらっしゃったような)。わりと楽しかったです。(というかT社の人すごかった。)

それはさておき、彼らは(霞ヶ関もそうかもしれませんが)アジェンダを設定して、プロジェクト、会議、WSを企画してくれます。ので、ぜひ執筆者も呼んで下さいませ(ちょっと営業してみたり)。

 

  • 提供

1)立ち位置(個人)=窓口、目利き、卸、橋渡し、アクセス、交流を促す

*通した方がスムーズ、楽チン

・アカデミックな人々

(分野:数学、物理、生命科学、経済学、化学、建築学、コンピュータ科学、農学、医学、法学、芸術学、開発学などには知り合いがいます)

「アカデミック雑談会」という会をたまに主催しています // 集めたお金のクリエイティブな使途?

・アカデミックな知識(経営学、論文、海外)

必要性・価値を伝える、浸透(shared understandings)? // 入山氏の本『世界の経営学者はいま何を考えているのか』← 概説書としておすすめです。

理解者、”academic practitioner”(アカデミックな実務家)?

成功事例、イメージ

2)第三者調査機関

検査、診断、分析(例:組織、測定、定量化)

お困りごと、相談 → リサーチの受託(最近1件有り)、共同研究

technical advisor

※「エビデンスに基づいた経営(evidence-based management)」という概念があるのですが、意味は読んで字のごとくです。研究と実務のギャップ(research-practice gap)も個人的な問題意識としてあります。

いくつか文献を再読して、またブログに書きます。

 

・博士事務所?(組織)、プロフェッショナル・ファーム

研究員 ← 人選、チームを組織

以上の活動を個人で行うのでなく、組織っぽくやってもいいのかなとも思います。研究員の方、絶賛募集中です。

 

  • クライアント

B:産学連携(SMEs、町工場、スタートアップ)

(仮)高いフィーは払えないexpensive?

C:創業者、フリーランスself-employed、医師、ビジネス系に明るくないemployee

パーソナル・トレーナー(カウンセラー、相談相手)として?

理系っぽい人のほうが執筆者との相性は良さそうな気がします。?

 

  • 報酬

相談・依頼があった場合

やぶさかではないが(喜んで)、お返しがあったらいいな // どういう心境で求めているのか?嫌な気持ち?

お返しの選択肢menuの提示(例えば~~)

1)人の紹介

知り合いの“アカデミック”な人、研究者

2)情報共有

イベント、感想、本(レビュー)

3)お金

価格設定、1万円(時給2000円、2割引、6時間)

4)相互に相談、逆相談two-way

「こんなこと考えてるんやけど」(資料、問いの形 (tangible definition (Bechky, 2003)))→「それやったら、こんな話できるで・こんな人知ってるで」

話せそうなこと (know what)、詳しい、自任(例:食通)、関心の変遷、キーワード

日頃から自己紹介、可視化=カード?

Austin (2003) などに"transactive memory"という概念が出てきますが、要するに"know who knows what"、知識の地図のようなものです。これは以上の議論と関連しそう。

 

・感謝を込めた贈り物として // tokenの発行?(小切手帳)

口約束ではなく明示・明文化explicit(例:泊めてもらってありがたい → 相談乗るで)

相手のニーズとの不一致?

 <イメージ>

甲__は乙__に対して以下のお返しをするつもりである。

発効日_年_月_日_

有効期限_ヶ月

紙をスキャン、名刺の裏?

QRコード(ID, PASS)、LINE等で送信(通知)

 

最後あまり時間がなく、文章の羅列になってます。すんません。

ご興味ある方はぜひ気軽に質問してください。

それではよい日曜最後の数時間を。

商売としての経営学研究者 (Day4.1)

前回のよく分からないブログ↓の続きです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

「商売としての」というキーワードなので、やはり考えるべきはお金を含めた対価、報酬のこと。この部分は会社員employeeや大学教員であれば、お給料が毎月一定額もらえるので、あまり考える必要はない(機会がない)かもしれません。しかし、フリーランスや自分で商売をしていこうという人にとっては、もっとも重要であり、難しいところではないかと思います。

 

まず、個人プラットフォームとして、アカデミックな人材、アカデミックな知識、などなどの仲介役という立ち位置が現状のアイデアです。

で、共同研究契約(この表現にはこだわり有)を結ぶ。例えば、toCの個人がクライアントであれば、パーソナル・トレーナーのイメージです。

月額5000円(友だち割?で4000円(2割引き))(他に1万円、3万円のプラン?)で月1ミーティングとか。

まず、この部分の相場がよく分からない。仲介役という立ち位置は個人的に納得感はあるが、では具体的に「どれぐらいの人数を紹介するのか?」「どの程度の知識・情報提供を行うのか?(例:リサーチ時間)」というパッケージを考えるのは難しい。

 

話は飛びますが、執筆者はインタビュー調査をするので、それに協力して下さる人がいます。それ自体はとてもありがたいことです。ただ、現状ではボランティア、あるいは将来への投資という感じだと思います。しかし、投資へのリターンを明文化していないので、「ありがたい」とは思いますが、なんだか申し訳ないような気もします。それにどのようにお返しをすればいいのか、もやっとしている。

このとき、小切手のような権利証書を用いることを考える。

協力していただいたお礼(薄謝ですが。。)として、イベントへのご招待、相談1時間、情報共有、人の紹介、リサーチの請負、などを挙げてみました。

 

なぜこのような契約としての明文化にこだわるかというと、「事前の取り決めがある方が、お願いしやすいのではないか?」という仮説があるからです。

つまり、相談に乗ったりすると、その場では「ありがとう!」と感謝されるが、そのお返しを後で、何かしらのお願いという形で請求しにくい気がするからです。感謝を可視化できた方が、いろいろスムーズにお願いができる気がします。

この可視化の方法はかなり精緻に突き詰めて考える必要があります。ビジネスライクになりすぎても、それこそ友人関係が崩壊しそうだし、かといって友だちだからいいよいいよ、というのもなんか違う気がする。もちろん他者の役に立つのは嬉しいが。

母の日の肩もみ券=日頃の感謝をこめた贈り物

これを使う母の気持ちはどうなんだろう?別に普段から肩もみとかをしている気がするし、わざわざその券を使う必要はないとも考えられる。

しかし、母には感謝しているが、それを殊更改めて口に出すのは気恥ずかしい。母も無償の愛かもしれないが、ちょっと今日は疲れたから肩もみしてほしい、代わりにご飯を作ってほしい、みたいなこともあるだろう。=家庭内通貨

ヘルプを求める行動をhelp-seekingと経営学では呼びますが、これには心理的なハードルが多い。その相手にgivingしたという気持ちperceivedがあれば、やりやすい。自分のお願いを正当化できる。それに事前にお返しの選択肢が記入されていれば、より使いやすい。そのあたりをうまく可視化するような仕組みができると、ヘルプが円滑に流れる、いい感じの社会になるような気がする。

 

注)これはあくまでも依頼、相談があった場合です。特に長期プロジェクトのように共同研究として進めていく場合に、このようなスキームを用いることを考えています。

1回2回の相談で、リターンをちまちまと求めるのはどうかとは思いますし。

 

近々で相談を受けていることがあるので、そのときに実験してみようと思います。

例えば時給3000円だとして、1時間の相談を受けた場合、3000円の報酬が発生することになります。これをお金でいただいてもいいですが、例えば依頼者とおもしろい友人と3人でランチ会を設けて、1000円分のご飯をおごってもらう、みたいなのもいいかなーと。つまり、こういう支払い方もあるよ、という選択肢を用意することが次にすべきことですかね。

 

知り合いでない人からの依頼(あまり想定しにくいですが)の場合は、弁護士さんの法律相談のように1時間いくらで、チャージすることになるかとは思います。お金以外のリターンを見ず知らずの人に求めるのはお互いに気まずいですし。

 

しかし、書いていて、お金や対価のことはおおっぴらに言いにくいなとも感じました。見返りを求めない贈与とか、give,give,giveとか、もちろんそれらが循環している、いつか返ってくるのだとは思います。が、それを証書として可視化したらどうなるのか、ということを検証してみたい気もします。契約として決まってる方が、後々にヘルプが必要になったときに頼みやすいというのもある気がします。当然の権利という感じで。遠慮するのも美徳だとは思いますし。

 

相変わらずよく分からない感じです。。m(__)m

商売としての経営学研究者 (Day4)

ちょっと別の場所にメモを書いたのですが、あまりまとまりきらなかったので、ここで書きながら自身の思考を整理したいと思います。

 

まず、経営学研究者は"Platform individual"になれるのではないか、ということです。

なんじゃそら?という声にお応えして、ご説明を。

執筆者は今を時めく(古文では時流に乗って栄えるという意味。脱線)プラットフォーム企業companyについて研究しております。そのビジネスモデルは、すごく簡単に言えば、複数のサイド(グループ)を結びつけることで価値を生み出すということです。

そのindividual、つまり個人バージョンです。(別に個人事業主でもよいので、その場合は株式会社なんとか、になるかもしれませんが。ちなみに執筆者は「博士事務所」という構想を以前から持ってまして、アカデミックなプロフェッショナル・ファームという趣です)

 

では、経営学研究者(特に執筆者の場合)は、何と何を結びつけるのか?

まず、クライアントは企業(官でも)か個人です。

・企業

特に、中小企業(論文ではSMEs=small and medium-sized enterpriseと呼ばれる)、町工場、スタートアップなどに需要があるのでは。

すなわち、大手のコンサルに頼むのは高い。それに対して執筆者のような研究者の卵であれば割安でできる気がします。(価格だけではない。検討要)

・個人

特に、フリーランスself-employed、医師、創業者、などをイメージしています。

以上の人たちにとっての、パーソナルトレーナー(カウンセラー)のような位置づけ。

 

で、もう一方のサイドには以下を想定しています。(仮説)

1.アカデミックな人材

紹介、アクセス

例:博士はもちろん、医師(自分の周りに多い)、会計士、弁護士などの士業、官僚、起業家、投資家(VC、インターン先)

2.アカデミックな知識=論文

研究者は当たり前のように論文を日々読んでいますが、そこに価値ある知見があることは周知でありつつも、いきなり訓練を受けていない人がアタックするのはコストがかかりすぎる。経営学研究者を通した方が、スムーズ、楽チン=プラットフォームの存在価値

東大経済の渡辺教授は、ナウキャストという会社の創業メンバーであり、技術顧問technical advisor(かっこいい)でもあります。

以上の2つがクライアントへの提供価値になるのでは。

 

イメージは「共同研究契約」なので、それぞれの中身を詰めて、パッケージにまとめられれば、提案しやすくなるのではと思います。

以前のブログに書いた気がしますが、経営学研究者の1つの役割として、検査・診断があります。これですね。

 

あくまでも対話のパートナーであり、相互作用interactionを通して、お互いに答えを探すことが、理想の関わり方(関係性)なのではないかと僕は思っています。つまりは「検査」や「診断」が主な役割かなということです。(あくまでも仮説です。今後、検証していきたいと思っています。パートナーの方募集中)

商売としての経営学研究者 (Day2) - アカデミックな読書メモ

 

この診断は研究者が一方的にするのではなく、互いにコミュニケーションを行うことで、互いに行うということです。(2015年のフィードバックについてのある論文では、mutually exploreという表現が用いられていました)

 

あとは、価格設定です。報酬、お返しをどのような形式にするか。

お金が普通ですが、ご飯をおごってもらうというのもあるかもですね。

あとは、情報や機会を対価として提供してもらう、ということです。

例えば、肩もみ券、小切手のイメージで、権利証書を発行する。内容は、1時間の相談、おもしろい人(friends of friendsと言ったりします)の紹介、おすすめ(例:本、アニメ、Web記事)などなど。

明文化してみてはどうかと。もちろん、贈与というか、見返りを期待しないgiveは、「いつか」返ってくる、循環すると思います。一方で、このリターンの時間差、つまり「いつか」っていつやねん?と思ったりもします。その点、証書があると分かりやすい。

こんなことを考えていると、地域(コミュニティ)通貨なるものがそう言えばあったなと思いだして、知人から聞いたカヤックさんの事例に到りました。(地域通貨&カヤックで検索)

給料の一部を使途を限定された通貨をイメージされているらしく、例えばつながりを促すような使い方が挙げられていました。そして、その使途をテクノロジーで可視化するらしいです。

この使途をより限定すれば、不特定多数が使える通貨ではなく、特定の人との間(身内)でのみ使えるということでしょうか。地域というのも、地理的に限定された場所を指すので、その中(例:商店街)でのみ使える、という限定がされています。

 

あまりまとまっていないもので恐縮です。ご意見いただければ。

 

自分自身の関心として、コミュニティをテクノロジーでサポートする(英語ばっかり。。)みたいなこともあるので、その辺も含めて試行錯誤、実験、実践を続けられればと思います。

 

小切手帳みたいなのを各自が持っていて、その額面にあたる部分に、いくつかのデフォルトの選択肢が書かれており、それにオリジナルを追加できる。それがオンラインとオフライン(リアル)の証書の組み合わせがデザインとしては面白そうなポイントです。

書いていて、なんとなく「限定」というのがキーワードになりそうな気がしました。

 

急に暑くなってきた京都下鴨の地より。

つづく↓

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

商売としての経営学研究者 (Day1.1)

少し変則的にDay1.1としてみました。下記投稿の続編という位置づけです。

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com

 

まず、経営学研究者の収入源(生活費、活動資金)は下の二本柱でしょうか。

・授業料

・研究費(国から)

 

で、下の2つの疑問が湧いてきました。

Q1:経営学研究者にとっての「売上」とは何なのか?

執筆者の専門の1つはアントレプレナーシップ(要するにベンチャー企業の研究)でして、創業者が第1に直面する課題が、いかに売上を立てるのか?という問題です。

Q2:経営学研究者にとって(繰り返し)「クライアント」とは誰なのか?

 

Q1について、情報を提供するわけですから、その対価としてお金を受け取ることになります。学生さんに対して、経営学の知識を提供すれば、その対価として授業料を受け取る。あるいはビジネスマンの方むけの講演に呼ばれて(まあそういうことも将来あるかもしれませんね)、ありがたい話をすれば、謝礼、講演料をいただけると。

大学の授業の場合、食べ放題というか、年間定められた金額を払えば、どの先生の授業も受けられるので、その意味では、毎回の授業でチャージが発生してるわけではないですが。

それはともかく、研究者のもう1つの一般的な仕事として、論文を書くということがあります。学会誌に投稿して、アクセプトされれば、それが業績になるという感じです。研究者コミュニティへの貢献の方法としてはこれが最も普通でしょう。

しかし、論文を書いても原稿料はいただけない。むしろ学会に入るのに年間1万円ぐらい(経営学の日本最大の学会=組織学会の場合)かかる。入ると投稿ができて、組織科学という雑誌を購読できるという特典付き。全国大会のときは参加費をまた払う。

この論文を読むのは、だいたいが研究者ですので、みなさん学会の会費を払っている。学会誌には広告記載欄があるので(だいたい学術出版社ですかね)、広告収入もありそう。学会誌を出すのにはけっこう経費がかかるんですかね。あとは事務スタッフさんの人件費とか。

なんか1本1万円とか、特許みたいにたくさん読まれたら(引用されたら)何パーセントかの報酬とか、そういう仕組みはないのか。(今度調べてみます)

 

まあ要するに何が言いたいかというと、論文を書いてもお金にはならない。

もちろん査読付き論文があれば(さらにトップジャーナルであれば)、業績になるので、就職の際には有利です。有利ということは、自分の行きたい大学に行ける確率が高くなるということでしょう。

良い大学とは、研究環境が整っている、学生の質が高い、家から近い、学食がおいしい、などなどでしょうか。京大東大だと国からたくさんお金がもらえるので、資金を潤沢に使えるのでしょうか。(経営学の研究にそんなにお金がいるのだろうか? まあインタビューの文字起こしとか助手さんがいたらなーと思う時はあります。そのお給料の財源にはなりますか)

 

しかし、以上の考察だけを見れば、良い就職をするために、良い論文を書いている、(特に博士課程の学生は)というように見えなくもない。もちろん学問的な興味とか、学術コミュニティへの貢献とかはありますが、すごく現実的な話(主にお金の話)をすれば、良い論文→良い就職、という構図に見える。うーむ。

 

まあこの辺は、アカデミックの就活をしてみないと分からないので、机上の空論はこの辺にしておきます。就活しながら、このあたりの点は検証してみたいと思います。ひとまずはこのルールに則って、がんばりたいと思います。

 

(Q2にたどり着く気がしませんが。。)研究費について一言。

今は国からお金が出ています。税金が財源。

他にお金を出してくれそうなアクターは、企業、個人。

企業から共同研究費としてお金をいただく、というのは別のところで色々と書いた気がするので割愛します。経営学研究者はダイレクトにビジネスの研究をしているので、この辺の営業活動は比較的しやすい、要するに価値が分かりやすいvisibleと思います。

 

一方で、個人から研究費をいただく、これは最近たまに見かける、研究者のクラウドファンディング(以下CF)でしょうか。執筆者がインターンさせてもらっていたVCも、アカデミストという会社さんと研究者支援をしてました。

この場合、リターンを何にするのか、というのは難しそうです。母の日に肩もみ券(権)を渡した遥か昔の記憶がよみがえってきましたが、何かしらの権利を渡すということでしょうか。研究成果について、あるいは研究者そのものについて。

 

時間が来そうですが、ここでちょっと考えたのは、研究者個人がエクイティを発行するという形です。個人の証券化とかICOとかなのかな。(リサーチ要)

株式みたいなのを発行して、その研究者の評価が上がれば、それに連動して株価が上がる。「株が上がる」という表現がある気がしますが、それを似ているかも。

株式は英語で「シェア」なので、その個人の一部を所有する(権利を主張できる)という感じ。よく論文の末尾にAcknowledgementという項があり、「この研究は科研費・なんとかグラントの支援によってうんぬんかんぬん」みたいなことが書いてあります。

まあ資金提供者・出資者・投資家なので、感謝の気持ちというか、何かしらリターンを返さないといけないですね。CFは身内が多いと思うので、リターンは心ばかりのお礼という感じもありますが、ほんとに株式になるとかなりリターンはシビアに求められるかもしれません。親も出資者と考えることもできる。

 

あとは研究者の報酬としてお金以外のもの、例えば、信用、評価rating、紹介、アクセス、ネットワーク(つながり)などなども考えられます。例えば執筆者のような経営学研究者だと、インタビュー調査先を紹介してもらえたりすると、お金をもらうよりも嬉しかったりします。(絶賛募集中ですよ笑)

評価経済という言葉もありますが、『魔法のコンパス』という本に、今はリターンを換金する時期を後ろにずらせるみたいなことが書いてありました。(おすすめの本です。執筆者の机の上にも並んでいます)

 

徳を積み重ねて、いつか返ってくる日を待ち遠しく思っている今日この頃でした(冗談です)

つづく

商売としての経営学研究者 (Day3)

なんだかんだで第3回です。(どうも経営学とか研究者像について色々と言わないと気が済まないような、執筆者のようです笑。それなりに需要があると信じて、アニソンメドレーを聞きながら)

 

今回は「慣れ」ということについて。 

先日まで東京暮らしで、とある投資にまつわる会社で2カ月ほどインターンをさせていただいておりました。それまであまりビジネスの現場に入ってどうこう、みたいな機会がなく、非常に新鮮でありがたい経験をさせていただきました。

そんな自分がいきなり現場に入ったので、色々と戸惑うことというか、疑問に思うことも多くありました。ですが、その違和感のようなものは、1ヶ月ぐらいもすると薄れていきました。

人間(良い意味でも悪い意味でも)慣れるというか、適応力が高いようです。まあそれもそのはず、いちいち目にするもの、耳にすることに感動して歓声を上げて、立ち止まってそれをしげしげと眺めて、あーでもないこーでもないと思案していたのでは、仕事になりません。

しかし、慣れるということは、本来は注目すべきもの(例:問題、改善点)をスルーしてしまうということにも、ともすればつながります。目慣れするというか、いつも見ている景色はいくら美しくても、それほど感動しなくなる。(丁寧語がめんどうになってきました笑)それは奈良や京都の人が世界遺産をそれほどありがたく思わないことを見ても分かるのでは。

 

ちょっと経営学的な話をすれば、ワイクK.E.Weickという学者さんがおりまして、『組織化の社会心理学』とか『センスメーキング・イン・オーガニゼーション』という本は日本語にも翻訳されています。

まあ有名な学者さんで、Katz&Kahnの『組織の社会心理学Social psychology of organizations』に対して、いやいや、組織ってのは静的staticに捉えてはだめで、ダイナミックに見る、現在進行形でプロセスを見ないといけないという意味で「組織化organizing」という表現を用いています。その点は執筆者も非常に共感で、現在の研究手法である創業プロセスの追跡というところにつながっています。

 

話が逸れましたが、(まあいつものことです笑)彼が提唱した考え方(概念construct)として、イナクトメントというものがあります。(以下記憶がちょっと不確かかもしれませんが、悪しからず。気になった方はグーグル先生に聞いて下さい)

要は、組織はいかにして環境を認識しているのか。環境や社会っては多義的、つまり様々な解釈があり得るものです。組織の構成員もいろんな人がいますから、同じものを見ても違うように感じたり、違うところに注目したり、記憶していたりすると思います。それは家族みたいな近しい人でもそうだと思います。

しかし、1つの組織としてそれなりにまとまって行動するには、その認識をある程度共有しておく必要があると。この認識が議論の前提になるわけですから。で、そのプロセスを彼は以下の4つに分けています。

囲い込み → 意味付け → 淘汰

まず環境の中で違和感というか「おやっ?」っと思うところがあるとします。それを囲い込んで、その部分を取り出して眺める、フォーカスを当てます。で、これは何なんだ?、あーでもないこーでもないと、そこに意味を与えようとします。(解釈)

でその解釈が個々人でいろいろあるわけですが、時間がたつにつれて、それが組織内である程度統一されてくると。そうなると、組織のメンバーは同じものを見ると、同じような解釈をするようになる。すると5年後の経営計画を作る際も、新商品開発のミーティングでも、スムーズにコミュニケーションできるようになります。現代組織論の祖であるバーナードC.Barnardは、組織を機能させる要素として①共通目的、②貢献意欲、③コミュニケーションを挙げていますが、特に重要なのが3つ目です。

というわけで、このワイクさんが言ってることは、組織がうまく機能していくプロセスを、解釈の共有に注目してモデル化してるわけです。

別の論文で以上のプロセスを星座に喩えていて、なんかかっこよかったです。単なる星の並びに意味を与えて、あれはサソリに似てるとか、乙女だとか、天秤だとか。さらにそれに神話のようなストーリーまでつけてしまう。その想像力には敬服します。

 

で、最初の話に戻ると、「慣れる」ことは、このプロセスの最初のステップである、囲い込みを阻害します。「おやっ?」と思わないことには、このプロセスは起動しません。

組織を円滑に機能させるためには、認識の共有が不可欠ですが、例えば組織を変えていきたいとき、新しいイノベーティブな製品を作り出したいとき、などには、その古い認識(前提)が邪魔をすることがあります。

だからこそ、ある論文(たしかAMR=Academy of Management Review)で、Foolish interlooperが良いと言われていました。要するに「アホな人」。立ち入り禁止って書いてあるのに、よく見ずに入っていってしまうような人ですかね笑。ほんとに危険な場所で、崖から落ちて帰らぬ人になるかもしれません。しかし稀に、その立ち入り禁止、タブー、禁忌、という看板は100年前に置かれたもので、そのときとは状況が変わっていて、今ではむしろ素晴らしい場所に変わっているかもしれません。

 

時間が無くなってきたので、最後に。

「宇宙人視点」が大事だと、小山薫堂さん(たしか佐渡島庸平さんも)書かれていた気がします。物事をゼロベースで見る、考えるということです。

またMITの石井裕さんは「他流試合」「海外雄飛」が大事だと。

いずれも、地球、自分の流派・国を別のものと比べることで、それに疑問を抱く、批判精神を持つということでしょうか。

そのように違うもの・新しいものを見て反応する=リアクティブであることが、若いということでしょう。(これは『生物学的文明論』という本に書いてあった気がします)

 

そのような人が起点となって、面白いことが起きていくのではないでしょうか。

またそれを邪魔しない環境を企業・職場・上司が用意することも不可欠でしょう。

 

何だかただの経営学解説みたいになってますが、経営学からはこんなことも考えることができるということをご理解いただければ幸いです。

そして、経営学研究者も実務家の方からすればある意味「宇宙人」でしょうし、まして自分のような若造の視点や考え方というのも、年長者の方には新鮮に感じられるかもしれません。Day2でも書きましたが、そのような様々な立場から商売に関わる商売人が、話をすると、色々と生まれてくるのではと思います。

経営学研究者であると同時に、商売人でもありたいと思う執筆者でした。

 

少し時間オーバーしました。今日はここらで。

つづく↓

 

academic-dokusho-memo.hatenablog.com